2015.05.27更新

 私や他の弁護士の常識を覆すであろう東京地裁2014/4/14判決が、5月25日発売の判例集(判例タイムズ1411号312頁)に掲載され、弁護士の間で話題となっていますので、紹介しておきます、、、

 事案の概容は、、、
 クラブのママである被告Yと、クラブの顧客だったAとの間に、7年間にわたる継続的な不貞行為があったことより、精神的苦痛を被ったとして、原告X(Aの妻)がYに対し400万円の慰謝料を請求した事案です。
 AとYとは、月に1~2回の頻度で土曜日に昼食をとった後、ホテルに行って夕方に別れるというパターンを繰り返していた。AはYのクラブに月1~2回には定期的に通い、同業者を連れていくこともあったという優良顧客でした。
 判決の結論は、「仮にAとYの間に継続的な不貞行為があったにせよ、、、Xとの関係で不法行為は成立しない」としています。
 判決の概容は、、、
1、AとYとの性交渉は典型的な枕営業に該当する。
2、一般に、夫婦の一方の配偶者Aと肉体関係を持った第三者Yは、故意または過失がある限り、配偶者Aを誘惑するなどして肉  体関係を持つに至らせたかどうか、AY両名の関係が自然の愛情によって生じたかどうかにかかわらず、他方の配偶者Xの夫または妻としての権利を侵害することになり、その肉体関係は違法行為となり、他方の配偶者Xの被った精神上の苦痛を慰藉すべき義務がある(最高裁判例)。
3、しかし、ソープランドに勤務する女性のような売春婦Zが、対価を得て妻Xのいる顧客Aと性交渉を行った場合、当該性交渉は当該顧客Aの性欲処理に商売として応じたにすぎず、何らAX間の婚姻共同生活の平和を害するものではないから、たとえそれが長年にわたり頻繁に行われ、そのことを知った妻Xが不快感や嫌悪感を抱いて精神的苦痛を受けたとしても、売春婦Zは妻Yに対する関係で慰謝料支払義務を負わない。
4、ところで、クラブのママやホステスが、自分を目当てとして定期的にクラブに通ってくれる優良顧客や、クラブが義務づけている同伴出勤に付き添ってくれる顧客を確保するために様々な営業活動を行っており、その中には、顧客の要求に応じて性交渉をする、いわゆる枕営ことは公知の事実である。
5、クラブのママYが枕営業として顧客Aと性交渉を反復継続したとしても、売春婦Zの場合と同様に、顧客Aの性欲処理に商売として応じたにすぎず(枕営業の対価は顧客がクラブに通って馴染み客として支払う代金の中に間接的に含まれている)、何らAX間の婚姻共同生活の平和を害するものではないから、そのことを知った妻Xが精神的苦痛を受けたとしても、妻Xに対する関係で不法行為を構成するものではない。
 

2015.05.01更新

 私は仕事柄、離婚に関する相談をよく受けるのですが、その際、相談者から時々出てくる質問が、「妻が勝手に家を飛び出して、現在長期間別居中である。ところが、私が仕事で留守中に、妻が自宅に無断で立ち入り、妻名義の預金通帳を持ち出したようだ。妻のこのような行為は犯罪になるのでは?」というものです。

 まず、長期別居中の妻が、勝手に相談者の自宅に入る行為は、住居侵入罪(刑法130条)という犯罪が成立します。
 この点、もともと一緒に暮らしていた家なのに、なぜ勝手に入ると犯罪になるのか、という疑問が生じますよね?
 これを理解するためには、まず、刑法が住居侵入罪を処罰するのはなぜか?言い換えると、住居侵入罪は、いったいどのような利益を守ろうとしているのか、を考えなければなりません。

 刑法の住居侵入罪がどのような利益を守ろうとしているのかについては、大別して2つの考え方があります。
 まず、①住居権説(新住居権説を含む)という考え方があります。この考えは、そこに住んでいる人が、誰を家に入れるか決める権利を持っているので、その権利を侵害するから、勝手に自宅に侵入する行為は違法だという考え方です。
 この住居権説からは、誰を家に入れるかは、家に住んでいる人間に決める権利があると考えるので、長期別居中の夫婦の場合、事前に承諾を得ていない限り、住居侵入罪が成立することになります。

 また、②住居の平穏説という考え方もあります。この考えは、住居の平穏な状態を侵害するから勝手に住居に侵入する行為は違法だという説です。
 この住居の平穏説からは、長期別居相手が勝手に家に入る行為は、住居の平穏な状態を害する行為と考えられるので、住居侵入罪が成立することになります。

 次に、長期別居中の妻が、妻自身の預金通帳を持ち出した行為はどうでしょう?この預金通帳は、妻自身の持ち物(所有物)なので、窃盗罪が成立しないかのように思えます。
 しかし、刑法242条には、「自己の財物であっても、他人が占有し、又は公務所の命令により他人が看守するものであるときは、この章の罪については、他人の財物とみなす。」と規定されています。
 つまり、たとえ自分の所有物であっても、他人が占有する物を勝手に持ち帰ったりすると、窃盗罪が成立するのです。

 だだ、直系血族・配偶者および同居の親族間で行われた窃盗は、たとえ犯罪が成立しても、刑が免除されるという刑法の規定があります(刑法244条)。
 よって、この場合、無断で自分の通帳を持ち出した妻の行為は、窃盗罪が成立するけれども、結局刑は免除されることになります。

 なお、別居中、離婚をするか、婚姻を継続するかを決めかね、悩んでおられる相談者もよくおられます。このとき、私は裁判所の調停手続を利用するよう勧めます。
 一般に、調停というと、離婚調停として、離婚に向けた話会いしか行われないかのように思われている方が多いですが、夫婦が円満な関係でなくなった場合には,円満な夫婦関係を回復するための話合いをする場としても、家庭裁判所の調停手続を利用することができます。
 調停手続では、当事者双方から事情を聞き,夫婦関係が円満でなくなった原因はどこにあるのか、その原因を各当事者がどのように努力して正すようにすれば夫婦関係が改善していくか等、解決案を提示したり、解決のために必要な助言をする形で進められます。
 なお,この調停手続は離婚した方がよいかどうか迷っている場合にも,利用することができます(以上、裁判所HPより引用)。

 以上、大阪の弁護士北畑瑞穂のブログでした!