2015.03.31更新

 法律相談において、最も多い相談内容は「離婚問題」です。これから離婚の話をしようと考えておられる方、既に別居されている方、離婚することの合意は出来ているが財産分与の方法で現在話し合っているという方、相手方の夫(妻)から調停を起こされたという方など、「離婚問題」といっても様々な段階があり、その段階に特有の問題があります。

 ただ、どの段階にも共通していえることは、「離婚に向けた事前準備が充実していればいるほど、適切かつ有利な条件で離婚をすることができる」ということです。

 みなさん「離婚に向けた事前準備」といえば、「相手の浮気の証拠を残す」、「(DVであれば)暴力を受けた証拠を残す」といった「離婚原因の証拠化」をイメージされることが多いと思います。

 勿論、これは非常に重要な準備であることに間違いありません。

 しかし、この「離婚原因の証拠化」に匹敵する事前準備は「相手名義の財産の把握」です。

 具体的には預貯金の把握、返戻金が発生するような生命保険の有無の確認、相手の給与明細や住宅ローンの内容の把握等です。

 これらは、同居中であれば比較的容易に確認できるものの、いったん別居してしまえば、一転して内容把握が困難になります。  
 
 もちろん離婚調停の段階に至れば、調停手続きの中で相手に財産開示を求めることが出来ますが、事前に相手方名義預貯金の通帳の1頁目をコピーしておけば、スムースに財産分与手続きを進めることが出来ます。

 また、給与明細についても同様です。確かに通帳を見れば手取り額を把握することは可能です。しかし、複数の金融機関に分けて給与が支給される場合や、各種手当は現金支給であったりする場合も少なくなく、こういった項目の全てが記載されている給与明細をコピーしておくことは非常に有益なのです。これも、いったん別居してしまえば、一転して内容把握が困難になります。

 以上、今回は、離婚の話を切り出す前の事前準備について紹介させていただきました。

 次回は、「離婚自体の合意は出来ているけれど...」というテーマでお話させていただきます。

 以上、今回は大阪の弁護士土佐剛太が執筆いたしました!

投稿者: みずほ法律事務所

2015.03.30更新

 先日26日、札幌ドームでのプロ野球の試合中、ファウルボールが直撃して失明した女性が球団を訴えた裁判の判決が出ました。
 この女性は、札幌ドームの1塁側内野席で観戦中、打者の打ったライナー性のファウルボールが直撃して失明等の傷害を負ったとして、4659万円余の損害賠償を求めたのに対し、札幌地方裁判所は、4195万円余の損害賠償請求を認容した、という判決でした。

 この判決の前に、3件ほど同様の裁判例がありましたが、この3件はすべて訴えた側(被害者側)が敗訴(請求棄却)という結果になっていますので、今回の裁判例は、観客に広い注意義務を課していた従来の裁判の流れを変えるものと言えそうです(もっとも、球団側が控訴する可能性はありますが、、、)。

 判決は、球団は試合観戦契約約款(ホームページで閲覧可能)にファウルボールへの注意喚起をしていること、チケット裏面にも注意喚起文言を記載していること、試合前・試合中に大型ビジョンでファウルボールへの注意喚起等をしていること、等は認められるが、これらのみでは観客の安全性確保には不十分としています。

 また、球団は、警笛を鳴らしていたとも主張しましたが、裁判所は、警笛を鳴らしても、ボールの所在を把握することは困難であり、警笛を鳴らした場合には即座に上半身を伏せるといった行動を周知しているような場合でなければ、警笛を鳴らしても速いライナー性のボールは回避できないとしています。

 このようにして、今回の判決では、重い怪我を負った被害者が金銭的な給付を受けることができたことは望ましいことです。

 だだ、プロ野球を球場で観戦する際には、観戦する側も、ファウルボールにより重い怪我を負う可能性を自覚した上で、投手の投球動作から打者の打撃に至り、ファウルボールが飛んでくる間、目をそらさずに観戦すること、万一打球を見失ったら、上半身を伏せるという行動を起こすこと、が必要なのでしょうね。

 また、子どもを野球観戦に連れて行く場合、上に述べた方法でファウルボールに注意させるとともに、応援する球団のヘルメットをかぶせてあげると、安全対策との一石二鳥になるのではないでしょうか?

 以上、大阪の弁護士北畑瑞穂のブログでした。

投稿者: みずほ法律事務所

2015.03.26更新

昨日、残業代不払いについて、このような報道がありました。

 『維新の党の足立康史衆院議員(比例近畿)は25日の衆院厚生労働委員会で質問に立ち、元私設秘書から未払いの残業代700万円を請求されたことを明かし「払うことはできない。私たち政治家の事務所は、残業代をきっちりと労働基準法に沿って払えるような態勢かと問題提起したい」と述べ、未払いを正当化した。
足立氏は「私は24時間365日仕事をする。そういう中、秘書だけ法に沿って残業代を支払うことはできない」と持論を展開。元秘書からの請求に対しては「ふざけるなと思う」と強弁した。
 足立氏は経済産業省の元キャリア官僚。取材に対し「労働基準法は現実に合っておらず、見直しが必要だ。議論を喚起するために発言した」と述べた。』

 そもそも残業代の不払いは、労働基準法第119条により6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられる犯罪行為にあたります、、、この議員さんは信念に基づいてこのような発言をされたのでしょうが、公の場で犯罪行為を堂々と宣言するその感覚、大丈夫でしょうか?(検察が立件に向けて動くものと思われます)。

 私の事務所は、主に使用者側の代理人として不払い残業代の請求に対応することが多いのですが、「現行の法律がそうなっている以上、正当な金額であれば不満はあるだろうが払うものは払わなあかん。」というスタンスで依頼者を説得することが多いですね。間違っても、「法律がおかしいから、残業代は払わんでよい」等々のアドバイスはしません。当たり前ですが。

 また、残業代の請求をされてしまう前に、予め就業規則等での残業代対策をアドバイスさせていただいておりますので、お気軽にご相談下さいませ。

 以上、大阪の弁護士北畑瑞穂のブログでした!
 

投稿者: みずほ法律事務所

2015.03.25更新

 先日、銃刀法違反に関して、このような報道がありました。

 路上で果物ナイフを所持したとして、和歌山県警和歌山東署は3月20日、和歌山市危機管理局長の●●容疑者(59)を銃刀法違反容疑で現行犯逮捕した。
 逮捕容疑は、3月20日午後10時10分ごろ、自宅近くの路上で刃渡り約9センチの果物ナイフ1本を所持したとしている。容疑を認めている。
 和歌山東署によると、●●容疑者はこの日、市中心部の繁華街で酒を飲んだ後、一人でタクシーに乗車。自宅近くで料金を払って降りたが、酔いつぶれて道に座り込んだため、運転手が110番通報した。駆け付けた署員が身元確認のため山田容疑者のリュックサックを開け、さやに入ったナイフを見つけた。●●容疑者は「持つのは勝手やろ。何が悪いんや」と話しているといい、同署は動機などを調べている。
 
 銃砲刀剣類所持等取締法第22条 は、刃体の長さが6cmをこえる刃物については、「何人も、業務その他正当な理由による場合を除いては、これを携帯してはならない。」と定め、これに違反した場合は2年以下の懲役又は30万円以下の罰金を設けています。

 「業務」とは、刃物を使うことが業務にあたる場合(例えば調理師さんが職場に行くために包丁をバッグに入れて持ち歩くなど)をいいます。
 
 「正当な理由」については、「護身用」とか「ただ何となく」とかは正当な理由とは認められません。

 「正当な理由」として、例えば、店から包丁を購入して自宅に持ち帰るような場合はこれにあたりますが、もしその途中に警察管に職務質問、所持品検査された場合に備えて、説明のために、包丁を購入した際の領収書やレシートを保管しておくべきでしょう。 

 また、キャンプや釣りで刃物を使うため、というのも一応正当な理由には該当しますが、これも怪しまれないために、むき出しで持ち歩くのではなく、厳重に梱包して持ち歩くのが無難です。

 キャンプや釣りが終わった後、刃物を車に積みっぱなしにしておいたら「正当な理由」には該当しないので、その際に不運にも職務質問されたら、逮捕の憂き目にあう可能性も、、、キャンパーや釣り師の方々は、くれぐれもご用心下さい。

 以上、大阪の弁護士北畑瑞穂のブログでした!

投稿者: みずほ法律事務所

2015.03.20更新

 先日、家電量販チェーン大手「上新電機」の元部長が「不正競争防止法違反容疑」で逮捕されたというニュースが報道されました。
 被疑者は、同じ家電量販業界の大手「エディオン」に勤務していましたが、転職後、以前勤務していたエディオンの営業情報を盗んだとことが発覚。これまでの捜査で、エディオン社内にあるパソコンから、各店舗の広告計画や、営業データなどを盗んだことが分かっています。

 企業経営者の方々は、従業員が退職するに際して自社の営業秘密が持ち出され、その従業員が同業他社に転職してこの営業秘密を利用されてしまうことを常に危惧されていることと思います。

 仮に元従業員がこのような行為を行った場合、「営業秘密」の侵害行為に罰則を課している「不正競争防止法」違反として、元従業員を警察・検察に告訴することになるのでしょうが、その前提として、普段から「営業秘密」の管理が必要となりますので注意が必要です。

 では、この「営業秘密」とは、どのような情報をいうのでしょうか?

 「営業秘密」とは、不正競争防止法で定められた3つの要件〔①秘密管理性(秘密として管理されていること)、②有用性(有用な情報であること、例えば設計図、製造ノウハウ、顧客名簿、仕入先リスト、販売マニュアル、等)、③非公知性(公然と知られていないこと)〕を全て満たしている情報をいいます。
 
 営業秘密管理の具体的な例をあげると、以下のとおりとなります。
 
 まず、情報が記載・記録された媒体に対する管理方法として、①「極秘」等のシールを貼付する、②施錠可能な金庫等に施錠し保管、③持ち出しや複製を禁止する、④コンピューターの閲覧に関するパスワード、ユーザーIDを設定する、④営業秘密にアクセスできる者を指定する、等。

 また、人に対する管理方法の例として、①就業規則等に秘密保持の規定を設ける、②従業者等に対し、在職中・退職時に秘密保持契約や誓約書により秘密保持義務を課す、③定期的に行われる朝礼等の際に、随時、営業秘密の取扱いに関する注意喚起を行う、④従業員等に対し、秘密管理の重要性について定期的な教育を実施する、等

 以上のうち、私は、人に対する管理方法が重要だと考えます。従業員に対して、普段から「営業秘密を漏えいさせると、不正競争防止法違反で場合によっては逮捕されることもありうる。」と伝えていると、従業員に対して抑止力となり、営業秘密の漏洩が未然に防げますもんね。

 企業経営者の方々は、以上を踏まえて今一度自社の営業秘密の管理についてチェックされてはいかがでしょうか?
 
 以上、大阪の弁護士北畑瑞穂のブログでした。

投稿者: みずほ法律事務所

2015.03.19更新

 会社法は改正の多い法律ですので、弁護士の業務を行って行く上では、会社法改正のたびその内容を把握しておく必要があります。

 直近でも、平成26年6月27日公布され、平成27年5月1日から施行される会社法の改正がありますので、備忘的にブログに残しておきたいと思います。

〔改正の概容〕

1. 社外取締役を置いていない場合の理由の開示
   事業年度の末日において、監査役会設置会社(公開会社かつ大会社に限る)であって、株式につき有価証券報告書を提出し   
 なければならないもの(典型的には上場会社)が社外取締役を置いていない場合には、取締役は、当該事業年度に関する定時 
 株主総会において、社外取締役を置くことが相当でない理由を説明しなければならないものとされます(372条の2)。
   社外取締役を置くことが相当でない理由を考えることはなかなか困難ですし、企業経営者からすれば、頭をひねって「社外取
 締役を置くことが相当でない理由」を考えても、株主総会で株主に袋だたきにあう可能性が高いです。それならば、さっさと社外
 取締役を選任してしまう方が楽だということになるので、事実上、社外取締役の設置が義務付けられたと考えてよさそうです。

2. 監査等委員会設置会社制度
  新たな機関設計として、監査等委員会設置会社制度が導入されます。監査等委員は取締役で、その過半数は社外取締役で 
 ある必要があります(399条の2第2項、331条6項)。監査等委員である取締役とそれ以外の取締役は、選任や報酬決定におい
 て区別され(329条2項、361条2項)、任期も異なります(332条3項、4項)。監査等委員会及び各監査等委員の権限は、基本的
 には、指名委員会等設置会社(現行法の委員会設置会社)の監査委員会及び各監査委員の権限と同様ですが(399条の2以下
 参照)、それに加え、監査等委員である取締役以外の取締役の選解任等及び報酬について株主総会で意見を述べることができ
 るものとされています(342条の2第4、361条6項)。

3. 社外取締役及び社外監査役の要件
  社外取締役及び社外監査役(以下併せて、社外役員)の社外性の要件として、①親会社等又は兄弟会社の関係者でないこと
 及び②当該株式会社の関係者(重要な使用人を含む)の配偶者又は二親等内の親族でないことが追加されます。
  
  私が社外監査役をしている会社の関係者と私とは親戚関係にない赤の他人ですので、辞めさせられることはなさそうです。

4.そのほか、①会計監査人の選任等に関する議案の内容の決定につき、株主総会に提出する会計監査人の選解任等に関する 
 議案の内容は、監査役(監査役会設置会社にあっては、監査役会)が決定することとなること(344条)、②
 親会社の株主が、一定の要件の下で、子会社の役員等の責任を追及する制度(多重代表訴訟制度)が導入されること、③いわ
 ゆる内部統制システムの内容として、会社法自体に「株式会社及びその子会社から成る企業集団における業務の適正を確保
 するための体制の整備」が定められたこと(348条3項4号、362条4項6号、416条1項1号ホ)、④M&Aに関する改正事項等、が
 改正点として挙げられます。
 
  弁護士は日々、業務を行うとともに、勉強も必要であることを痛感しますね。
 
  以上、大阪の弁護士北畑瑞穂のブログでした!

投稿者: みずほ法律事務所

2015.03.13更新

昨日のブログでご説明した定期賃貸借契約、内容はご理解いただけたでしょうか?
今日は、この定期賃貸借契約の契約書に、貸主からの中途解約ができるという条項が記載されているときに、貸主はこの条項に基づいて契約を中途解約できるのか、という問題について説明したいと思います。
なぜこのようなことを書くかというと、私が業務で定期賃貸借契約の契約書をチェックしている場合、よくこのような「貸主からの中途解約可」という条項が含まれた契約書を目にするからなんです。

契約書に中途解約可能な条項が入っているということは、契約時に貸主のみならず借主も、契約の中途で解約されることを納得、承諾した上で契約を結んでいるのですから、この条項に基づいて、貸主は契約途中で定期賃貸借契約を解約できるように思います。

しかしながら、このような中途解約条項は無効、と考えるのが一般です。理由は、契約の終了期限が不確定なものとなるので、定期賃貸借契約の趣旨からすると無効と考えるべき、とされています(この点について争われた裁判例は見当たりませんでしたが、解釈本(例えば別冊法学セミナー「基本法コンメンタール」第二版補訂版借地借家法p119、Q&A定期借家権p228~p229など)には明記されています。

そうすると、貸主は、中途解約条項を入れた上で借主と定期建物賃貸借契約を結んだとしても、契約途中で解約することはできない、ということになります。

この問題は、物件の所有者である貸主から物件を購入した新オーナーの場合、深刻な影響をもたらす場合があります。

一般に、賃貸借契約がついた物件(店子さんがいる物件)を所有者から購入した新オーナーは、旧所有者が借主と結んだ賃貸借契約の条件(例えば家賃の金額、契約終了時期、その他)をそっくりそのまま引き継ぎます。

そうすると、新オーナーは、さきほどの中途解約条項が付いていることを知って店子つきの物件を購入することになります。

例えば、元の所有者(Aさんとします)と借主(Bさん、例えば牛丼屋さんとします)との間で、家賃月額100万円、10年の定期建物賃貸借契約が結ばれた建物を、5年目終了時に1億5000万円で購入した新オーナーさん(Cさんとします)は、しばらくは月100万円、年間1200万円の家賃収入をもらっていましたが、7年目に、その物件を、牛丼屋さんBに立ち退いてもらった上で1億8000円で購入してもよい、という方(Dさん)が現れたとします。

Cさんは、1億5000万円で購入した物件を1億8000万円で売却できるのだからと、喜びいさんでさっそくDさんと売買契約を結びました。
そして、契約を結んだ後、借主のBさんに、当初の契約の中途解約条項に基づいて、立ち退きを求めました。
ところが、そのBさんは、弁護士に相談した結果、そのような中途解約条項は無効であるとして、立ち退きを拒否しました。
また、もし立ち退きを求めるのであれば、牛丼屋Bさんは年間約2000万円の営業キャッシュフロー(要は稼いだ現金のことです)を生み出しているので、10年の定期賃貸借契約を7年満了時に退去するのであれば、残り3年で約6000万円稼げたはずだから、6000万円の立退料をもらえば立ち退きに応じる、と言ってきました。

Cさんはここで困った立場におかれてしまいました。6000万円の立退料を支払ってしまうと、収支は①もともとの建物の購入金額-1億5000万円、②6年目7年目の賃料合計+2400万円、③今回の売却金額+1億円8000万円、④立退料-6000万円、なので、合計すると600万円の赤字になってしまいます。

これに対し、立退料を支払わず、牛丼屋Bさんを退去できないとすると、CさんはDさんと結んだ、牛丼屋Bさんを立ち退かせた建物を引き渡す、という契約が実現できないとして、Dさんから違約金(売買代金の20%、3600万円とします)を請求されてしまします。
この場合のCさんの収支は、①もともとの建物の購入金額-1億5000万円、②6年目7年目の賃料合計+2400万円、③違約金-3600万円、④ただし、建物は依然としてCさんのもので、建物の価値を購入金額と同じ1億5000万円と考えたとしても、収支は1200万円の赤字となってしまいます。

このように、定期賃貸借契約書に中途解約条項が入っているからといって、無条件で中途解約することはできないので、さきほどの例のCさんは、建物を購入する際に弁護士に相談して、中途解約できない物件であることを認識した上で購入すればよかったのですね。そうすると、弁護士に対する相談費用(私なら5000円~10000円程度、顧問契約をしていただいていれば無料です)の出費のみで、後の大赤字は回避することができたのです。

以上、大阪の弁護士北畑瑞穂のブログでした!

投稿者: みずほ法律事務所

2015.03.12更新

 従来の賃貸借契約は、法律上、「正当事由」がある場合でなければ、賃貸人(貸主)から契約の解約申し入れができないこととされてきました。そこで、貸主が借主に対して解約を求めたくても「正当事由」が乏しい場合、それを補完するものとして、それ相応の立退料を支払わなければ解約できないことになります。従来の賃貸借契約は、借主が不意に追い出されないよう、借主側が厚く保護されているんですね。

 これに対し、契約で定めた期間が満了することにより、更新されることなく、確定的に賃貸借が終了する賃貸借のことを定期賃貸借といいます。
 定期賃貸借は、内容的な要件としては期間を確定的に定めることが必要です。
 また、形式上の要件として、「公正証書による等書面によって契約する」ときに限って、定めることができるものとされています。
この場合、貸主は借主に対して、契約の更新はなく、期間の満了とともに契約が終了することを、契約書とは別にあらかじめ書面を交付して説明しなければなりません。
貸主がこの説明を怠ったときは、その契約は定期賃貸借としての効力は否定され、従来型の、契約の更新のある賃貸借契約となります。

 この定期賃貸借、貸主にとっては大きなメリットがあり、かつデメリットは考え難い、貸主にとっては使い勝手のよい制度といえます。
 定期借家契約を結ぶと、「貸したら返ってこない」といったことがなくなり、建て替えや大規模修繕を行いやすく、計画的な賃貸経営が可能となるからです。
  具体的なメリットとしては、
 ①賃貸経営上の最大のネックであった「正当事由」を気にせずに、立退料等を支払うことなく契約終了、立ち退き問題が解決で  
  きる。
 ②契約の更新はなく、継続の場合は再契約で対処できる。建て替え等の計画があれば1年、あるいは2年ごとの再契約を繰り 
  返せば、立ち退き料の負担もなく計画が進められる 。
 ③長期(10年以上)の契約の際、賃料改定を契約の中に特約で盛り込めば、安心して改定できる
 ④ 契約期間終了前でも、借主が契約内容に違反していれば契約解除できる

 それでは、借主にメリット、デメリットはあるのでしょうか?
 この点、賃貸物件の活発な流通を期待して創設された制度だけに、借主のメリットはあまり多くなく、逆にデメリットがはっきりしているようです。
 これから契約を締結する入居希望者にとっては、契約期間が満了すると必ず契約が終了するというのは、かなり不安なものです。
 たとえば3年契約の場合、3年後に自分がどういう状況にあるか確実に予測できる入居希望者はほとんどいません。そうすると、3年後に、やっぱりこの部屋に住み続けたいという状況となることもあり得るので、3年で必ず契約が終了し、出ていかなければならないという契約には躊躇するはずですよね。

 では、この定期賃貸借契約の契約書に、貸主からの中途解約ができるという条項が記載されているときに、貸主はこの条項に基づいて中途解約できるのでしょうか?
 なぜこのようなことを書くかというと、私が業務で定期賃貸借契約の契約書をチェックしている場合、よくこのような「貸主からの中途解約可」という条項が含まれた契約書を目にするからです。

 この点については、次回のブログで説明したいと思います。

以上、大阪の弁護士北畑瑞穂のブログでした!

投稿者: みずほ法律事務所

2015.03.11更新

 今日、京都から大阪の私の事務所に車で移動中、名神高速道路の京都南インター付近でヒッチハイクをしている若者カップルを見かけたので、好奇心旺盛な私は彼らを乗せてあげることにしました。若者たちの目的地は広島ということなので、私は彼らを名神高速道路の吹田サービスエリアまで乗せてあげたのです。到着まで約25分程度の短い時間でしたが、楽しく話ができ、良いひとときを過ごせました。彼らが無事今日中に目的地の広島までたどり着けること、祈っています!

 と同時に、運転している時に、職業病といいますか、好意同乗の問題が頭をよぎりましたので、この「好意同乗」という概念について、簡単に説明したいと思います。

 好意同乗とは、交通事故を起こし、好意・無償で同乗させていた他人に損害を与えてしまった場合に、その運転者は通常の金額どおりの損害賠償をしなければならないのか、それとも減額が認められるのかという問題です。

 今日のように、私が自動車を運転していたところ、ヒッチハイクの若者たちを見かけたので、好意・無償で若者たちを同乗させてあげ、その後、若者たちを同乗させたまま交通事故を起こしてしまい、若者たちに怪我をさせてしまったとします。
 この場合、若者達は、運転者である私に対して損害賠償請求ができるのですが、私はあくまで好意及び無償で若者たちを同乗させてあげています。それにもかかわらず、通常の交通事故の場合と同じような金額の賠償責任を私に課すのが妥当なのかという疑問が生じます。

 そこで、このような好意同乗の場合には、それを理由として、損害賠償額を減額すべきではないのか、という問題が「好意同乗減額」と呼ばれる問題です。

 この好意同乗減額は、昭和の時代の裁判例では認める場合が多かったように思います。

 もっとも、現在では、好意同乗であるというだけで減額が認められるという例は少なくなり、同乗者(前記の例でいえば若者たち)に何らかの帰責性がある場合だけ,好意同乗減額を認めるというのが一般的になっています。
 同乗者の帰責性とは、たとえば、同乗者が運転を邪魔したというように、交通事故発生や損害の発生・拡大に関与またはその危険を増幅させたといえる場合や、運転者が無免許や薬物使用中であることを知りながら同乗した場合のように,交通事故発生や損害の発生・拡大が生じる蓋然性があることを分かっていながら同乗したといえる場合です。

 職業柄、今日の運転中にこのような問題が頭をよぎったので、若者たちを乗せている際には、楽しくおしゃべりしながらも普段以上に安全運転に徹したことは言うまでもありません。

 
 以上、大阪の弁護士北畑瑞穂のブログでした。

投稿者: みずほ法律事務所

2015.03.10更新

根抵当権(ねていとうけん)とは、一定の範囲内の不特定の債権を極度額の範囲内において担保するために不動産上に設定された担保物権のことをいいます。(民法第398条の2第1項)これに対し、通常の抵当権は特定の債権を被担保債権とします。
根抵当権は特定の債権を担保するものではないため付従性(附従性)がなく、継続的な取引関係にある当事者間に生じる債権を担保することに向いています。
例えばB会社と取引のあるA銀行が、B会社に融資することによって生じる金銭債権に、担保権の設定を受けておきたいと考えたとします。その際、通常の抵当権の設定を受けた場合、被担保債権は特定の債権なので、新たな融資債権が生じた場合には、別の抵当権の設定を受けなければならなります。これでは抵当権を設定するための登記費用もばかにならないし、手間もかかります。また抵当不動産に後順位抵当権が設定されていた場合には、新たな抵当権は当該抵当権に劣後することになり、担保としての実効性にも乏しくなります。
この点、根抵当権であれば、根抵当権設定登記において、AB間の銀行取引によって生じるAの債権を被担保債権としておきさえすれば、極度額の範囲内で、全ての融資債権が根抵当権によって担保されるから、普通抵当権のような問題は生じません。
つまり、当初A銀行との取引で、自社不動産に極度額2000万円で根抵当権を設定して1000万円借入を行ったB会社が(借入①とします)、2年後にA銀行との間で別途1000万円の借入を行った場合(借入②とします)、根抵当権は、借入①のみならず借入②にも及ぶことになります。
そうすると、例えば、借入①から5年後に、借入①の残債が200万円になっており、この200万円をB会社が一括で弁済したとして、B会社がA銀行に根抵当権の抹消を求めたとしても、A銀行からは、当該根抵当権は借入②も担保していることを理由に、借入②の完済がない限り根抵当権の抹消を拒否されることになります。
 根抵当権を設定して借入を行った会社ないし個人は、根抵当権により担保される債権の範囲には気をつけなければなりませんね。
 
 
 

 以上、大阪の弁護士北畑瑞穂のブログでした。

投稿者: みずほ法律事務所

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