2015.09.25更新

医療事故調査制度について、私は医療機関側の弁護士としてこれまで準備を重ねてきましたのでよく知っていますが、一般の方々で詳細をご存じの方は少ないのではないでしょうか?

医療事故調査制度は、改正医療法の「医療の安全の確保」の章に位置づけられ、医療事故の再発防止により医療の安全を確保することを目的とした制度で、平成27年10月1日から実施されることが予定されています。

今日は、この医療事故調査制度の概要を説明したいと思います。

まず、医療事故調査制度における調査の流れですが、医療機関で死亡・死産事例が発生した場合、当該医療機関が「医療事故」に該当するか否かの判断を行い、「医療事故」に該当すると判断した場合は、医療機関は遺族への説明、医療事故調査・支援センターへの報告、必要な調査の実施、調査結果について遺族への説明及びセンターへの報告を行います。

また、医療機関又は遺族から調査の依頼があったものについて、センターが調査を行い、その結果を医療危難及び遺族への報告を行います。

この「医療事故」とは、①当該病院等に勤務する医療従事者が提供した医療に起因し、又は起因すると疑われる死亡又は死産であって、②当該管理者が当該死亡又は死産を予期しなかったものとして厚生労働省令で定めるもの、をいいます。

この「①医療に起因し、又は起因すると疑われる死亡又は死産」とは、診察、検査、治療によって起こった死亡又は死産をいいますが、その他に転倒・転落に関連するもの、誤嚥に関連するもの、患者の身体的拘束、身体抑制に関連するものも含まれうることが特徴的です。

これに対し、施設の火災、地震・落雷等の天災、自殺等による死亡は含まれません。

また、「②死亡又は死産を予期しなかったもの」という要件は、例えば医師が患者等に事前に説明していたり、診療録等へ事前に記載していたりすれば、該当しないことになります。

 なお、この制度において、「医療事故」に該当するかどうかについては、医療機関の管理者が組織として判断するとされており、ご遺族から医療事故調査・支援センターに報告する仕組みではありません。

 この医療事故調査制度、10月1日から開始されますが、最初は医療機関も手探りの部分があろうかと思います。実際にどのように運用されるのか、私も注意深く見守りたいと思います。

投稿者: みずほ法律事務所

2015.09.17更新

私は、大阪弁護士会の広報委員会として、とあるラジオの法律コーナーの原稿を作成することがあります。今日は先日作成した原稿内容をご紹介しますね。

質問

「私はある小さな会社でサラリーマンをしています。

その会社の上司から常々、

「もっと身だしなみをきちんとしろ」と言われて困っています。

「もっと髪の毛を短くしろ」ですとか「ヒゲを剃れ」とか、

細かいことを言ってくるのです。

私自身は、さほど周りの人と変わらないファッションだと

思っているのですが、上司は、

「命令に従わなければ昇格はさせない」とまで言われて、

やる気が失せています。

そこでご相談ですが、このような命令にどう対処したらよい

でしょうか?」

 

回答 

1.人格権と契約関係に基づく制約

  髪の長さや髭の有無など身だしなみを自分の好みにすることは、憲法13条によって保障された人格権の一つであり、原則として本人の自由に委ねられるべ   きものです。

 とはいえ、会社と従業員とは契約関係で結ばれていますので、会社は合理的な理由があれば、従業員の自由を制約できます。

 その制約の合理性の判断の方法ですが、(1)身だしなみに対する制約の目的が正当かどうか(目的の正当性)、次に(2)その目的を達成する上で、制約の手段が合理的かどうか(手段の合理性)、という観点から判断されます。

 もしあなたが営業職や会社窓口担当者など、お客さんと対面する業務をおこなう従業員であれば、身だしなみをきちんとさせることは、お客さんへの安心感や、会社に対する信用を維持するという点で、目的自体については一般的に制約は合理性があるといえます。

 しかし、その目的を達成する上で、どこまで具体的にあなたの身だしなみを制約するか、また、違反に対してどのようなペナルティを与えるかは慎重に判断されることになります。

 特に髪型や髭の制約は、業務時間外にも当然及びますので、無制限の制約することは問題があります。

 入社時に身だしなみに対する具体的な合意がない場合には、お客さんに不快感を与えない程度の髪型・髭であれば、上司の命令に従う必要はないでしょう。また、前記のとおりの許容される程度の身だしなみをしていたのに、それを理由に昇格をさせない、とする上司の命令は違法となる可能性がありますので、その旨上司に強く申し入れるべきでしょう。

 2 参考となる裁判例(ハイヤー運転手口ひげ裁判)

 一つ参考になる裁判例としては、東京地裁昭和55年12月15日(ハイヤー運転手口ひげ裁判)があります。この裁判では、結論として髭を剃る義務はないと判断しています。

 この事案では、規律で定められている「ヒゲの禁止」の内容について、すべての「ヒゲ」を禁止しているのではなく、見ている人が不快感を伴う、「無精ヒゲ」とか「異様、奇異なヒゲ」を禁止しているものと判断し、禁止されている「ヒゲ」の範囲を限定的に解釈しました。

 裁判所は、① 乗務員の規律を規定した「乗務勤務要領」を作成した当時、「ヒゲ」に手入れされた口ひげが含まれると明確に意図していなかったと推認されること、② ハイヤー業界においても、手入れされた口ひげを生やして乗車勤務しないという慣行が定立されているとはいえないこと、③ 取引先からAさんの口ひげについて苦情が出るなど業務上の悪影響があったとは認められないことといった事情を総合的に考慮し、Aさんに対する業務命令には必要性・合理性がないと判断し、禁止される「ヒゲ」の意味を不快感を与えるものに限定しました。

 たとえ業務命令であったしても、それが本当に業務上必要であるのか、その制約が業務と関係するのかを緻密に考えているのが裁判所のスタンスのようです。

投稿者: みずほ法律事務所